サンゴの調子を上げる

サンゴ水槽のミネラルの補給(カルシウム・KH「重曹」・マグネシウム)

サンゴを飼育するうえでミネラルの補給は、水替えである程度は対応することができます。しかし、大型水槽になると毎週1/3程のの海水を入れ替えるとすると、海水の量は数十リットルとなり大変です。水替えを減らすためには、サンゴの育成で最も大切なカルシウムの補給が必要になります。

カルシウムは生物が一番多く必要としているミネラルです。サンゴが成長するために水槽内のカルシウム、KH(重曹)、マグネシウムを多く消費します。そして、プロテインスキマーを使用すると更にミネラルが取り除かれてしまいます。

¶ カルシウム・重曹・マグネシウムの役割
・カルシウム(Ca)は、すべての生物に必要なミネラルで、サンゴの骨格の形成に大きく関わっています。
・重曹(KH)は、pHの緩衝作用として重要ですが、リン酸や硝酸塩の除去にも役立ちます。
 ※ 重曹が硝酸塩を分解する過程で、二酸化炭素や窒素ガスを発生しますので、添加後は一時的にpHが下がります。
・マグネシウム(Mg)は、カルシウムと共に骨格や歯、鱗(うろこ)などの形成に必要不可欠な栄養素です。

海水の酸素、餌、各種ミネラルなどは、どんどん使われて無くなっていきます。 これらは炭酸ガス、硝酸塩、リン酸塩などの有害物質に変えられていきます。水質は時間とともに悪化しています。

ミネラルを添加して、有害物質を除去する方法として、カルシウムリアクターを使ったり、ショップで販売されているサンゴ用の添加物を投入するのが一般的です。でも価格が高いことに躊躇します。添加物の主な成分は、水酸化カルシウム「Ca(OH)2」、重曹「炭酸水素ナトリウムNaHCO3」、硫酸マグネシウム「MgSO4」などです。これらを家庭用品で購入して水槽に添加することで、経済的なメリットを得ることができます。

「通販で販売されている家庭用の水酸化カルシウム、重曹、硫酸マグネシウム」

自宅ではカルシウムの添加には、通販のホタテガイの貝殻焼成カルシウムを利用しています。また、重曹や硫酸マグネシウムも1000円未満で購入することができます。これらのミネラルを家庭用で代用することで低価格でたくさん購入することができます。

¶ カルシウム・重曹・マグネシウムの比率
サンゴを飼育する場合のミネラルのの比率は、カルシウム6:重曹3:マグネシウム2です。マグネシウムは少し多めに入れて、カルシウムと重曹の結合(炭酸カルシウムの沈殿)を防ぎます。また、カルシウム1:重曹1の比率にすると結合して沈殿しますので、この比率は避けてください。

カルシウム、KH(重曹)、マグネシウムを添加する時は、順番があります。最初に、マグネシウムをコップの中に海水を入れて溶かしてから添加します。重曹とカルシウム結合(炭酸カルシウムの沈殿)を押さえるためです。

(水酸化カルシウム)Ca(OH)2)+(水素)H+(重炭酸)HCO3- → (炭酸カルシウム)CaCo3+(水)2 H2O

次にカルシウムの急激なpHの上昇を抑えるためにKH(重曹)を添加します。そして最後に急激にpHが上昇しないように少しずつ点滴でカルシウムを添加します。

¶ カルシウム・重曹・マグネシウムの順番
 ①硫酸マグネシウム
 ②重曹(炭酸水素ナトリウム)
 ③カルシウム

これらのミネラルは、サンゴの育成だけでなく水質の改善に大きな役割があります。カルシウムは、リン酸塩と結びつき炭化カルシウムとなって沈殿します。そして、プロテインスキマーで排除されます。また、重曹は硝酸塩を除去する働きがあります。そして、マグネシウムは光合成に役立つ重要な成分になります。

カルシウムの添加は、飽和が早い(水に溶けない)ことで手間が掛かることが難点です。1Lに小さじ1杯位しか溶けません。対処方法として、バケツの底に小さな穴をあけて、エアーポンプのエアー分岐用金属のコックを差し込んで3秒に1滴くらいの量を添加できるよう調整して添加すると、一度にたくさんのカルシウムを添加することができます。これらの添加で、pHを8前後(7.8~8.3)に保ちます。

¶ ミネラル(カルシウム・重曹・マグネシウム)を添加しない方法(サンゴろ材の効果)

粗目サンゴろ材


自宅では、ウエット濾過槽のセラミック系のろ材を粗目サンゴ砂に切り替えて、4.5L程入れています。サンゴろ材が安価なことも理由ですが、サンゴろ材にはカルシウムリアクターと同じような働きがあるからです。サンゴろ材を入れて2ヶ月経過する頃に硝化バクテリアが増殖して、サンゴろ材の主な成分の炭酸カルシウムを溶かしてくれます。発生したカルシウムと炭酸イオンは、水質をアルカリ性にしていく働きがあります。pHは、8.0~8.3に保っています。

また、サンゴの生育に必要なミネラルも供給してくれますので、今では殆ど カルシウム、重曹、マグネシウムの添加はしていません。サンゴのろ材を投入のポイントは、バクテリアが増殖して効果が出るまで(3ヶ月以上)待つことです。その間は、カルシュウムの添加が必要です。

¶サンゴろ材と、プロテインスキーマーの組み合わせがベスト:
サンゴろ材を利用して3ヶ月程経つと硝化バクテリアが十分に棲みつきます。この頃にはバクテリアの働きでサンゴろ材が溶け始めます。サンゴに有用なミネラルを排出するだけでなく、有害な硝酸塩やリン酸塩も除去してくれます。またHpが安定することも大きなメリットになります。低価格で海水魚とサンゴを飼育する構成では、サンゴろ材とプロテインスキマーの組み合わせが、最もいいと考えています。

¶サンゴろ材の主なメリット
 ① サンゴが吸収可能なカルシウムイオンを生成する
 ② リン酸と硝酸の除去
 ③ pHの安定

① カルシウムイオン生成について
炭酸カルシウム(サンゴろ材)は、水に溶けにくい性質なので、サンゴがカルシュウムを吸収することができません。そこでバクテリアが生成する硝酸と反応して、硝酸カルシウムや二酸化炭素が生成されます。この時に硝酸も除去します。

硝酸 + 炭酸カルシウム → 硝酸カルシウム + 水 + 二酸化炭素
2HNO3 + CaCO3 → Ca(NO3)2 + CO2 + H2O

生成された硝酸カルシウムの特徴は、弱酸で完全水溶性があり、植物が直接吸収できる形態の窒素になります。次に一緒に生成された二酸化炭素は、もう一度サンゴろ材(炭酸カルシウム)と反応します。

炭酸カルシウム + 水 + 二酸化炭素 → 炭酸水素カルシウム 
CaCo3 + H2O + CO2 → Ca(HCo3)2

このことから、最終的に炭酸水素カルシウムが生成されます。炭酸水素カルシウムは、カルシウムイオンと炭酸水素イオンからなる塩で、サンゴが吸収可能な形態になります。

② リン酸塩の除去について
リン酸塩は、カルシウムと結合してリン酸カルシウムに変化する性質を持っています。

リン酸 + 水酸化カルシウム → リン酸カルシウム + 水
2H3PO4 + 3Ca(OH)2 → Ca3(PO4)2
+ 6H2O

リン酸カルシウムは水に溶けないため、プロテインスキマーで除去されます。

③ pHの安定
サンゴろ材から溶け出したカルシウム分は、様々な化学反応によりpHとGHを引き上げる効果があります。尚、海水魚を多く飼育している環境では、明け方にはpHが下がります。理由は、夜はサンゴも光合成をしませんので、海水魚の呼吸で二酸化炭素が発生することです。この二酸化炭素と水のが反応することで、炭酸塩濃度(KH)の成分(炭酸水素カルシウム)が生成されます。 

これらの働きは、カルシウムリアクターと殆ど同じです。カルシウムリアクターは、二酸化炭素で炭酸カルシウムを溶かしていますが、サンゴろ材は硝化バクテリアが炭酸カルシウムを溶かします。言い換えると、「サンゴろ材は、自然のカルシウムリアクター」と言うことです。

pHが下がった時は、サンゴろ材を軽く海水で濯ぐことpHが上がりだします。急激なpHの変化を知るためには、pHモニターを設置すると便利です。

pHメーター

水質管理で最も必要な3つに、「水温」と「塩分濃度」そして「pH」が挙げられます。これまでにヒーターが切れて、水温が急激に下がったことや、塩分濃度が薄いことに気が付かないでサンゴが★にしたことがありました。そして最も悲惨な結果になったのが、水質が急激に悪化して水槽が崩壊したことがあります。これはpHを管理していれば防げたはずです。

しかしアクアリウムを安全な状態に保つために必要なpHメーターを、設置していない家庭は多いのではないでしょうか。

pHメーターを見ていると、海水の中で有害な硝酸塩やリン酸塩等の有害物質が増えると、pHが酸性に傾くので、水質悪化をいち早く知ることができます。

自宅では、オーバーフロー水槽でサンゴろ材を使うようになってからpHが安定して、海水魚(タツノオトシゴ)が長く生きるようになりました。勿論、サンゴも元気に育っています。pHの変化を知ることは、海水魚やサンゴを長期飼育するために不可な要素です。