色上げ

タツノオトシゴを鮮やかなオレンジや、赤、黄色に色揚げする方法

タツノオトシゴの殆どが、黒色やブラウン系です。その次に多いのが黄色。そして赤、オレンジ、白になります。タツノオトシゴの価格では黄色が黒色の2倍強、オレンジや赤になると3倍以上で売られることがあります。タツノオトシゴを色揚げして、価値を高めることはできないのか? と、色々調べてみました。自宅のテスト結果も合わせてレポートします。

ショップでは、鮮やかな黄色とオレンジ色が販売されていました。オレンジは人気が高く完売していました。自然の環境でこのような鮮やかな色になることはあるのでしょうか。タツノオトシゴは、擬態のために色や模様を変えることが知られています。実際に購入して、1か月程経つと黒に変色しました。黒から茶色、グレー、黄色等に変色する方法は、前ページ(タツノオトシゴを変色させる方法)で紹介いたしましたが、鮮やかな黄色や、オレンジ、赤にするためにはもう一工夫が必要です。

色揚げとは:
魚の色が鮮やかになることを「色が揚あがる」と言います。エサを使って色揚げができるのは、赤やオレンジ、黄色の暖色系の色です。青い色は色揚げできません。赤とオレンジの色揚げ用のエサの成分は、カロチノイドの一種になります。

色素胞が色揚げで変化するイメージ

◆色揚げでの注意:
 ・色素を持ていない個体は、色揚げできない
 ・色が揚げし易い個体は、遺伝する
 ・カロチノイドをたくさん与えると消化不良を起こす
 ・タツノオトシゴは、強いUVで黒くなる(熱帯魚と逆)

赤いカニやエビ、鮭は、カロチノイドの一種であるアスタキサンチを含有したオキアミ等のプランクトンを食べることで、体が赤くなっていることがわかっています。赤色のタツノオトシゴも、このアスタキサンチを含有したプランクトンや小エビを食べて体を赤くできる個体があると考えています。

「カロチノイド」は、
動物・植物がもつ黄・赤色色素の総称。天然のカロチノイドには、β-カロチン・リコピン・アスタキサンチンなど、600種類以上あります。抗酸化作用があります。動物は、体内で作る事ができないからので植物やそれを食べた動物から摂取します。脂溶性なので、油に溶けやすく、水に溶けにくい性質があります。

ニンジンから作られたβ-カロチンのパウダー(食品の着色用)

タツノオトシゴの色揚げには、カロチノイドが必要です。タツノオトシゴは色素胞に使用される色素を合成することができません。カロテノイドを補給できない場合は、体内の色素胞は徐々に色素を失い、色が薄くなる可能性があります。海洋生物はカロテノイドを合成できないので、食事からカロチノイドを摂取できなければ、赤と黄色の色素を維持できません。タツノオトシゴに与えるエサでは、冷凍ブラインシュリンプや、アミエビにカロチノイドが含まれています。タツノオトシゴの健康を維持するためにもカロチノイドが必要です。

自然界では、藻類(アスタキサンチンを含有)を捕食するプランクトンや海老から赤色のカロチノイドを摂取しています。

ニンジンのβ-カロチンとエサを混ぜたもの

自宅では、入手し易い植物の着色料で使われるβ-カロチンをタツノオトシゴに与えて、色揚げを試してみます。β-カロチンは、カロチノイドに代表した黄色をした成分です。特にニンジン、カボチャ、トマトなど、色のこい緑黄色野菜や果物に多く、ニンジンのだいだい色の素になっています。「カロチン、カロテン(carotene)」という名前はニンジン(carrot;キャロット)から来ています。ニンジン由来のためタツノオトシゴに効果があるのかどうかはわかりませんが、一度試してみることにしました。


カロチノイドの一種であるアスタキサンチを含む餌

冷凍クリーンブラインシュリンプ(キョーリン )は、色揚げ要素であるアスタキサンチンを含んでいます。その効果では、甲殻類や熱帯魚の天然の美しさをひき出します。また、体内にDHAやEPAなどの栄養も保持しているので、タツノオトシゴの主食として給餌できます。

◆アミエビには、アスタキサンチンと、DHA/EPAが豊富に含まれています。アスタキサンチンは、身よりも殻や尾により多く含まれています。アスタキサンチンの赤い色は強い着色料になり、高級金魚の色揚げ(独特の赤い色を発色させる)のエサとしても使われています。但し高蛋白であるため、沢山食べさせると消化不良を起こし、食欲がなくなるとも言われています。

だいだい色のβ-カロチンを与える
ブラインシュリンプにアスタキサンチン(赤いカロテノイド)が含まれているので、色揚げには、鮮やかなオレンジ色をしたニンジンに多く含まれているβ-カロチンをタツノオトシゴのエサに混ぜてみました。鮮やかなオレンジ色のタツノオトシゴが誕生すればいいのですが。。。カロチンはたくさんの種類がありますが、β-カロチンを選んだ理由は、手軽に手に入って鮮やかな色なのニンジンから作るβ-カロチンが色揚げいいと考えたからです。早速タツノオトシゴに与えました。

β-カロチンを混ぜたエサ(ブラインシュリンプとアミエビ)を食べるタツノオトシゴ

ニンジンから作ったβ-カロチンなので、タツノオトシゴが食べてくれるか心配でしたが、以前と同じように食べてくれたので、一安心です。

前回のテストでは、水槽を派手な一色で飾るよりも、色々な色ので飾る方が色揚げができる情報があったので、プラスチックを入れてタツノオトシゴが赤や黄色に変色しないかを確かめました。その結果センスの悪い水槽になってしまいました。今度はバックスクリーンを青色にすて、派手な黄色のディスクコーラル、クレナイベニスズメ、ニシキデグリを混泳させた自然な雰囲気を醸し出した水槽で、タツノオトシゴが刺激を受けて派手な色になることを期待しています。

元々は真っ黒な色のタツノオトシゴの変色に成功したタツノオトシゴに、β-カロチンのエサを1か月強程あたえてみます。

β-カロチンのエサを与えて、4日目にブルーのバックスクリーンに変更。現在は2週間程です

1ヶ月程経過しました。変色は確かに進んでいるので黄色くはなっていますが、色揚げに関しては特に変化ない(黄色が濃くなってない)ような気がします。ショップのカリビアンシーホースのような鮮やかさはありません。エサは食べてくれますが、鰓(エラ)からβ-カロチンを出しているようです。

アスタキサンチンを添加する
次の作戦では、熱帯魚や金魚の色揚げ用のエサにアスタキサンチンが添加されていることに着目しました。このアスタキサンチンは、色揚げに効果ある天然の暗赤色のケトカロテノイドです。サケやカニ、エビなどが赤いのは、アスタキサンチンを含んだエサを食べることで体に取り入れているからです。これをタツノオトシゴに与えてみます。

ヘマトコッカス藻の粉末

 

アスタキサンチンは、海洋細菌や微細藻類に含まれています。サプリメント等で市販されているのは、淡水性緑藻(微細藻)のヘマトコッカス藻から取り出したものです。そして、アスタキサンチンは、抗酸化作用(老化防止)や紫外線からお肌を守るUVケアとされています。タツノオトシゴは強い光やUVで焼けて黒くなりますので、アスタキサンチンを食べさすことで、赤く色揚げができるかも知れません。毎日タツノオトシゴに与えている冷凍ブラインシュリンプにアスタキサンチンが含まれているので、既に与えていることになりますが、よりたくさん与えることで赤く色揚げできないかを試してみる予定です。

ヘマトコッカス藻のアスタキサンチン

タツノオトシゴの赤色は、遺伝要素が高いとの情報があります。自宅のクロウミウマに少し赤みがある個体があるので色揚げに期待します。また、アスタキサンチンはタツノオトシゴの生育で有効な成分です。早速、実験をしています。

 

赤黒く感じるクロウミウマ

今日からアスタキサンチンをホワイトシュリンプやブラインシュリンプに混ぜて与えます。アスタキサンチンは、色揚げ用フードの中に含まれることが多く、熱帯魚や金魚のエサで実績があります。タツノオトシゴに有効かどうかは、未確認ですが、期待したいものです。

結局、約1ヶ月程アスタキサンチンを混ぜたエサを与えましたが、色揚げしませんでした。効果が感じられません。そもそもアスタキサンチンは、冷凍ブラインシュリンプに含まれているので、多く与えても意味がなかったようです。残念ですが色揚げを一旦断念することにしました。

テストから2か月経ちました。クロウミウマは、成長するとオスは黒色でメスは、黄色やブラウンになることがわかっています。(自宅のクロウミウマも該当します)
何方か、タツノオトシゴの色揚げ方法をご存知でしたらコメント下さい。

色揚げ方法のヒントを大学の先生やショップから教えていただきました。水槽のスクリーンの色をある色に変えることが最も影響するようです。但し、色はタツノオトシゴの種類や個体によって異なります。その方法を現在自宅で検証中です。100%ではありませんが効果が見えてきました。近日その方法と検証写真をアップさせていただきます。

「ショップの話」カリビアンシーホースの場合ですが、バックスクリーンをブルーにするだけでなく、低床もブルーにすると色揚げするそうです。砂が必要な場合は、ブルーの砂(ガラスの砂)を敷きます。この時に鮮やかなイエローかオレンジに変色します。

「大学の先生の話」オオウミウマの場合、ブルーやグリーンの水槽では、黒・黄色・オレンジ色・黒と白のマダラくブラックになります。バックスクリーンと低床をブラックにすると、殆どのオオウミウマがイエローになるそうです。

タツノオトシゴの色揚げと、バックスクリーンと低床の色の関係


「自宅の話」
ゼブラスナウトシーホース
では、バックスクリーンのみをブラックにした(低床はサンゴ砂)場合、一匹は鮮やかなイエローを維持、もう一匹はキャラメル色になっています。ブルーよりもブラックの方が効果はありました。

以上のことから、バックスクリーンと低床をブラックにして、カリビアンシーホースとゼブラスナウトシーホースが、どんな色に変色するかを知らべたいと思います。

タツノオトシゴの色と水槽の色の変化
一番最初は「ブルーの壁紙とサンゴ砂」です。ゼブラスナウトシーホースとクロウミウマは、メスの方が発色のいいイエローをしています。日数が経ってゼブラスナウトシーホースのメスもオスと同じ焦げ茶色に変色しましたが、クロウミウマのメスはイエローのままでした。

次は「ブラックの壁紙とサンゴ砂」です。カリビアンシーホースでは、オスとメスの両方が購入時はイエローでしたが、ブラックになりました。サンゴ砂で飼育すると発色はよくないです。また、ゼブラスナウトシーホースは、オスはイエローになりました。メスはキャラメル色です。ブルーの壁紙よりブラックの壁紙の方が色揚げの効果が高いようです。

最後に「ブラックの壁紙とサンゴ砂」です。水槽の左の壁紙がブルーに見えますが、映り込みの関係です。実際はブラックです。1週間でカリビアンシーホースは、メスがイエローに戻ってきました。オスは白と黒の斑模様で少し明るい色になった程度です。カリビアンシーホースの雄のキャラメル色も明るくなりました。(未だ日数が経っていないので結果の写真を後日掲載いたします)

タツノオトシゴの色揚げの結果
・壁紙は、(赤・青を試したが)ブラックが最も変色と発色がよい
・低床もブラックにしないと色揚げの効果が薄い
・オスよりメスの方が変色しやすく発色がきれい
・LEDを赤色にしてみたが関係が見られなかった
・食べ物は、関係ない

以上のことから「タツノオトシゴの色揚げは、ブラックの壁紙で3方を多い低床もブラックにすること」と結論付けました。

濃いい青色の容器の中でカリビアンシーホースを飼育

色揚げについてネットで調べると、メダカの場合でも容器はブラックが最もいいと言われています。一方で店舗でのカリビアンシーホースの色揚げでは、水槽をブルーの壁紙で覆い、低床もブルーの壁紙を敷いたり、ブルーの砂(ガラス)にしています。これでは人工的にイメージになり観賞の魅力が半減します。色揚げには代償が必要なことがわかりました。責めてブラックの砂(天然の砂)で代用することで、少しでも自然な感じを維持して美しいタツノオトシゴを観賞したいものです。

ブラックサンドは、メダカ用のブラックサンドを利用しています。粒サイズ は約2mm程度です。底砂が黒いと映えたタツノオトシゴが観賞できます。また水中で舞いにくく、水質への影響がありません。天然の砂と記載がありますが、黒色の寒水石(石材名:大理石)のようです。結晶質のため所々光って見えます。熱帯魚やマガキ貝もブラックサンドに潜っていますし、海藻(ホソバアマモ)も育っているので安心して利用しています。

濃いい青色の容器でカリビアンシーホースを飼育
色揚げのために、ペット容器を青色にして、カリビアンシーホース2匹を2週間ほど飼育しました。全方面が濃いい青色です。中に緑と赤い海藻を入れました。

濃いい青色の容器でカリビアンシーホースを飼育

ペットショップの壁紙は水色で、カリビアンシーホースは鮮やかなイエローやオレンジの色をしていたので、ペット容器を青いマジックで塗って、穴を開けてカリビアンシーホース2匹をいれました。2週間経過しましたが、ブラックの水槽の時より体が幾分黒くなってしまいました。

カリビアンシーホース

カリビアンシーホース

最後に全方位を青くしましたが、結局 黒い水槽が色揚げでは一番効果がありました。実験は、これで終わりにします。現在は、黒い水槽でゼブラスナウトシーホース(イエローとキャラメル色)とヒメタツ(ホワイト、褐色)、カリビアンシーホース(イエロー、グレーの斑模様)を飼育しています。