タツノオトシゴの大型種であるクロウミウマや、カリビアンシーホースは、小さな幼魚をたくさん産むので、エサは大きなブラインシュリンプでなく、小さなワムシ(シオミズツボワムシ)を与えます。ワムシのエサには、EPAやDHA(不飽和脂肪酸)を含むもので培養することが必要です。ワムシのエサでは、EPAが豊富なナンノクロロプシス(植物性プランクトン)を与えることが一般的ですが、今回は、キートセロスの培養方法をテストすることにしました。
キートセロスを培養する理由は、(ナンノクロロプシスと比べてワムシもブラインシュリンプも育てることは同じですが)ナンノクロロプシスの場合、培養液のpHが高くなりすぎるのでに酢を入れてブラインシュリンプを育てていました。また、ナンノクロロプシスの培養液を作るのが少し煩雑なことです。
一方で、キートセロスのデメリットは、底に沈殿するので、混ぜたりエアレーションをすること必要なことです。また、若干栄養(EPA等)もナンノクロロプシスと比べると低いです。尚、キートセロスは、冷蔵庫(5℃)で20日保存しても増殖が可能であるが、ナンノクロロプシスは、冷蔵庫で2ヶ月保存できるようである。
¶キートセロスの培養液の作り方
①1Lの計量カップで海水(海水の素で塩分濃度3.5%にする)を作る
※ 濃度は少し薄くても問題ない
② メタケイ酸ナトリウムを1g添加する
③ ハイポネックスを1cc添加する
よく混ぜるとできあがりです。
¶キートセロスの維持
上の水槽の写真では、キートセロスが入った培養液を小さな容器にいれて、水槽の中で培養(保存)しています。キートセロスは、直射日光で培養することが難しいのでLEDで培養しています。培養液の海水は、水槽の中の海水を入れると手軽にできますが、微生物が混入した場合、キートセロスを食べ尽くされるので新に海水を作ります。(自宅では水槽の海水をそのまま使ってますが、今の所は問題ありません)
キートセロスは、底に沈殿するので、1日に1~2回スポイトで新鮮な空気を入れてかき混ぜます。1週間程すれば下の写真(左)の培養液が下写真(右)のように黄色っぽくなってきます。時々、培養液を入れ替えることで半永久的にキートセロスの維持ができます。
キートセロスの培養液と水槽内で出の維持
¶キートセロスの培養
今度は、維持でなくキートセロスの密度を高くする培養(密度を高くする)方法です。先ず培養液にキートセロスを数CC入れます。キートセロスは直ぐに沈殿するのでエアレーションをします。新鮮な空気を入れることでキートセロスの密度が高くなります。培養に最適な温度は、25℃です。これ以上温度が上がらないように注意して下さい。また、直射日光にも強くないので光は、ホワイト色のLEDを照射します。色が濃いくなり飽和したらワムシやブラインシュリンプに与えます。
上の写真は、1Lの計量カップに培養液と数CCのキートセロスを入れて、エアレーション(足し水)をしたものを、10日程リフジウム水槽に入れて取り出しました。写真ではわかり難いのですが、エアレーションをした方が水槽で維持したキートセロスよりも明らかに濃厚です。
白色LEDの照射とエアレーションの影響で、効率よく培養されました。この容器に沸かしたブラインシュリンプを入れて、もう一度リフジウム水槽に戻すと、3週間もすれば、栄養たっぷりの大きなブラインシュリンプになります。これは贅沢なタツノオトシゴの生餌です。こ時の世話は、ブラインシュリンプがかき混ぜられないようにエアレーションは少し弱めにして、海水が減ると足すだけです。特に何もしなくてもブラインシュリンプは育ちます。尚、ブラインシュリンプは、塩分濃度が少々濃いくなっても問題ありません。
これまでに一度、ワムシで使ったスポイトを培養中のキートセロスの容器で使用してしまったことがあります。ワムシの混入に気づかず放置していたことで、ワムシが爆殖してしまいキートセロスが全滅したことがあります。今では、ワムシのスポイトをくれぐれもキートセロスの容器で使わないようにしています。
キートセロスの培養は、一週間は白くて増えないように見えますが、10日位経つと急に褐色になります。最初はキートセロスの濃度が薄いので気長に培養します。
※ キートセロス・グラシリス(Chaetoceros gracilis)
キートセロスは、ウニやナマコ、貝類・甲殻類・海綿動物のエサとして広く採用されている浮遊珪藻(植物性プランクトン)です。キートセロスの種類「グラシリス」は、安定して培養をすることができます。今回培養したのは、キートセロス・グラシリスです。