水槽の管理

海水の管理(水質を可視化)

海水の状態が、見えるようにする!

毎日、水槽を眺めていますが、陸上で暮らしている我々とって魚にとって水槽内が快適かどうかは、計り知れません。少しでも水中の環境がわかるように海水を管理する方法について考えてみました。

魚が★になったので、水槽に手を入れると水温が下がっていたことを経験したことがありませんか?ヒーターは、運が悪ければ2年で切れることがあります。目立たないように小さな温度計を付けていたので、温度を見ることなくヒーター切れを気づくことができませんでした。

これまで、他にもうっかりミスに気づかずに、魚やサンゴを★にしてしまったことがあります。いつも海水の状況が見えるようにするために、適切な計測機器の設置が必要です。水槽の必須アイテムの温度計や、比重計はありますが、そこにPHメーター、ORP値(バクテリアの状況管理)を加えることで、水槽の状況をある程度把握することができるので、うっかりミスも少なくなります。

PHメーター、ORP値の値をモニタリング

海水魚の飼育で、うっかりミスを無くすためには、デジタル表示器で、温度、PH、ORPの3つを常に表示することである程度の水質の変化を把握することができます。最近は、通信販売で安価なものが売られているのでご検討してみてはいかがでしょうか。
※ 値段で判断すると、防水対応でなかったり、初期不良及び校正ができないものがあります。ご注意して下さい。(半年以上利用しましたが誤差が大きいので正直あまりお勧めいたしません)

■バクテリア濃度の管理: ORP(Oxidation Reduction Potential)
ORPは、酸化還元電位のことで、この値のが下がると次のことがわかってきます。

・プロテインスキマーが機能していない
・生体が死滅する(死体を分解するバクテリアが酸素を消費する)
・生体が増える(時間がたっても、戻らない場合はろ過能力不足)
・水替・大量の足し水
・エサを大量に与える

酸化還元電位で、好気バクテリアが居るか居ないかがわかります。酸化還元電位は、「酸化する力」と「還元する力」の大きさを表します。例えば、ORPの値がプラスなら酸化体が多く、マイナスなら還元体が多いことになります。

具体的には、水槽内の酸化力が強いと酸素が多い。酸化力が弱いと酸素が少ないことを表します。水槽にエサや糞、死骸などの有機物が多く存在すると有機物を分解するために多くの酸素が消費されるので、酸化力が下がることになります。このことは、バクテリアが酸素を多く消費しているのでバクテリアが多く居ることが判断できます。

また、サンゴや海藻の多い水槽では、光合成により夜と昼との値も変わってきます。(昼は酸化力が強くなります)

ORP(酸化還元電位)の範囲は-420mVから+820mVになります。先ずは、ORPの値を管理して、平均値を把握することが大切です。水槽内では、300mVから400mV(バクテリアが十分に有機物を分解できる値)の範囲になるように水質を管理をします。

■酸性・アルカリ性の管理:
水槽のpH(ペーハー)は、 7.8~8.4の範囲が理想。自然の海水は8.0~8.3です。水質の現状把握と変化(異常値)を管理をします。アンモニアがどんどん分解され、硝酸塩やリン酸塩が増加して、pHが下がります。中性になると海水魚やサンゴは生きることができません。pHが下がれば、水替えや添加物を使って硝酸塩やリン酸塩の除去を行います。

また、pHショックは、魚を新しい水槽に入れる時にがショックを受けることです。最初は、pHの違いによるショック死と疑われていましたが、実際は、pHの違いだけではなく水温や水質の違いが原因のことがあります。

デジタル式pHメーターについて
デジタル式pHメーターを久しぶりに利用した時に、数字が正しく表示されなくなり使えなかったりします。pH電極が乾燥すると数か月で電極が劣化します。

最近、デジタルpHメーターは、通販などで安価で1,500円~5,000円程度でお手頃な価格になりました。デジタル式pHメータは、正確な数値が測定できることも魅力ですが、毎月、校正(値を設定し直すこと)が必須です。手間が掛かりますが必ず校正してから利用しましょう。また、2点校正(酸性と中性の2点で精度を合わせる)のものを選びましょう。安価な製品は1点校正の商品が多いのですが、6か月もすれば大きな誤差が生じてきます。

デジタル式pHメーターのメンテナンス
・酸性や強いアルカリ性の物を想定すると、都度校正が必要になります。
・pH電極は、乾燥すると数か月で劣化するので、保存液に浸した保存が必要です。
(メンテナンスにより、寿命が長くなります)

電極が交換できないものは、使い捨てになります。デジタル式pHメータを2~3年維持するためには、保存液(またはpH4標準液)を数滴垂らし保管することが必要です。保存液が乾燥しないようpH電極のキャップが水漏れしないタイプを選ぶといいでしょう。

☑ 自宅のpH測定
サンゴ等のシビアな生体を飼育するためには、デジタル式pHメーターで常時モニタリングする商品がお勧めです。長期に利用すると誤差が出ますので、誤差のチェック用に「pHテスト試薬」や[pH試験紙」を利用しています。尚、pHメーターは定期定期な校正が必要になります。

pHと塩分濃度の校正


pHメーターを利用していますが、精度があまりよくないので、粉末と(純水でない)浄水器の水で校正液を作っています。正確な測定よりも精度が荒くても こまめな校正が大切です。校正では、2本のセンサーを同じ校正液に入れて、ドライバーで測定値と校正液のpH濃度になるように調整します。写真の計測機は2点校正なので、pH4とpH6.86の2つを調整します。確認で校正液pH9.18を測定すると、ピッタリの値にはなりませんが、概ね合っていれば良しとしています。(公正チェックをする時は、電極は全て「塩分濃度や温度計など」溶液につけて下さい)

塩分は、温度で変化する比重よりも、塩分濃度で管理する方が誤差がでません。海水の塩分濃度は概ね35ppt(35%)です。これは、965gの水に35gの塩が含まれている濃度です。この時の水の重さの合計は1000gです。この塩分濃度35ppt(25℃)の比重は、1.0264になるので、一般的にアクアリウムで言われているベストな1.023よりも高い値です。自宅の塩分濃度は、3.0~3.3%にしています。正直どちらが正しいのかどうかはわかりません。

■塩分濃度の管理:

自宅の海水の比重は、1.023になるように心掛けます。海水魚は、多少塩分濃度が低くても問題のない種類が多いのですが、タツノオトシゴは浸透圧で水を吸収して体が太くなり食欲がなくなることがあります。更にハードコーラルでは塩分濃度が薄いと致命的な結果になります。逆に、海水魚は比重が高いと直ぐに調子を悪くしてしまう種類が多いので、サンゴと海水魚の両方を飼育するためには、塩分濃度の管理が求められます。

・サンゴは、比重が低いと直ぐに調子を崩しますので適性値は1.023~1.026程度と高めにします。塩分濃度が1.023以上になると、サンゴ砂やライブロックの石灰が溶け出してpHが上がります。但し、1.027以上になれば調子を崩してしまいます。

・海水魚は、どちらかろ言うと塩分濃度が多少低くても生きられます。逆に高いと調子を崩します。1.027を超える日が続くと死んでしまいます。

塩分濃度の管理には、こまめに測れて正確な光屈折式の塩分濃度計が重宝します。価格も手ごろになっています。ATCと書いてあるのは、温度により比重が変化するので自動調整の機能があるものです。使い方は、スポイトで海水を数滴たらすだけで塩分濃度や比重が測定できます。但し、塩分濃度の校正はキッチリ行うことが必要です。蒸留水(水道水でもOK)で、塩分濃度がゼロになるように小さいドライバーで設定するだけで簡単です。(毎回水道水で校正して利用して下さい。結構、狂います)いち早く水質の変化を知ることが、海水魚・サンゴを長期に飼育するために重要なポイントになります。

一時的に、塩分濃度の変化がすぐわかるようにフロートタイプの海水比重計を常時水槽の隅などの目立たないところにに浮かせましたが、誤差が大きいのでいかがなものでしょうか。

水質の管理は、簡単に利用できる設備を備えることことがポイントです。例えば、 テトラ テスト 6 in 1 試験紙があれば、何かあった時や傾向をある程度把握することができます。一方で、淡水で利用されるTDSメーターは、水の不純物を測定するものです。塩と微量の元素で構成されている海水では、TDSを計測しても意味がありません。

家庭用デジタル塩分計で、安価で塩分濃度を測定できるものがあります。但し、測定の上限が2%迄ものが多いので、5%程度測定できる製品をを選定します。実際に使いましたが、誤差が大きかったです。できれば1万円以上のアクアリウム用のものがお勧めです。アタゴ社のポケット塩分計は、プロも使っています。

■自宅で利用している塩分濃度計:

自宅では、正確な塩分濃度ができるデジタル式と光学式の2つを使っています

■海水の水質管理の総論
1. 温度管理(外付けの大きなデジタル表示がお勧めです)
2. 塩分濃度(光の屈折式が手軽に計測できます)
3. バクテリア(ORPの値を管理して状況を把握します)
4. PH管理(デジタル式が安価になりましたが、メンテナンスで試薬がお勧め)
5. 水 流(流量をコントロールする水流ポンプの設置が必要)
7. 酸素濃度(プロテインスキマーやオバーフロー水槽の場合は、不要)
8. アンモニア・亜硝酸塩・硝酸塩(水作りができていれば、硝酸塩を管理)
9. 海水成分(ハードコーラル以外の飼育では、適当な水替えで十分)
10. カルシュム濃度(ハードコーラルを飼育する場合に計測)

水質管理の実用的なポイント
1.水温、pH(リン酸塩と処酸塩の量)と、塩分濃度(比重)を確認する
2.プロテインスキマーの調整と掃除(汚れの戻りをなくす)
3.サンゴ砂は少なくして掃除し易くする(水替えの時に掃除する)

この3つができれば、サンゴや熱帯魚(タツノオトシゴ)を長期に育てることができるのです。但し、混泳する魚の数が多い場合は、合わせてpHの管理が非常に重要になります。アンモニアの分解が進めばリン酸塩が増加してpHが下がります。中性になると魚もサンゴも生きることができません。PHの管理は、こちらのページで紹介しています。