サンゴの調子を上げる

サンゴと海水魚の飼育ポイント(水質)

美しいサンゴや海水熱帯魚の観賞は、とても癒されます。滑稽でかわいい魚の動きに魅了されて一念発起でアクアリウムを始められた方が多いと思います。一方で、アクアリウムを諦める主な理由は、「すぐに死なせてしまう」「維持費が高い」「手間がかかる」が上げらます。その他では「引っ越し」「仕事が忙しい」「水漏れ」などではないでしょうか。

アクアリウムを続けるうえで、特に気を付けていることは長生きをさせることです。高価な生体が次々と死んでしまうと楽しみがなくなり、費用も掛かることとからアクアリウムを続けることができなくなります。次第に飼育がうまくなって生体が長く生きるようになれば、次は見栄えを良くすることです。ここまで来れば、アクアリウムを心から楽しむことができます。そして最後は、手間やお金を掛けずに飼育することです。このブログでは、簡単にわかり易くサンゴや海水魚を、長く飼育する方法をご紹介いたします。

自宅では、生体を死なせないようになるまで、何年も掛かりました。死なせてしまった理由がわかってしまうと、「もっと早く、誰かに教えてもらえたり、いい本があればよかったのに」と思ったりもしました。理由がわかれば、サンゴや海水魚の飼育は、それ程難しくありません。

¶  楽しいアクアリウムの3つポイント
 ① 生体を長く飼育する
 ② 美観をよくする
 ② 手間と維持費掛けない

¶  最初の飼育は水作りから
生体を長く生きさせるための最初の一歩は、「水作り」です。水道水と海水の素で作った海水で、直ぐに魚を飼育しても、魚は生きることができません。ろ過バクテリアが住んでいないので魚のエサや糞が分解されて有害なアンモニアが発生するからです。自然の海では、微生物が濾過の機能を果たしています。水槽の中で、ろ過バクテリアを増殖させる過程や、バクテリアをろ材に定着させることを「水作り」と言います。

様々なろ過バクテリアが働くことで、エサの残りや排泄物は分解されます。
「エサの残りや、排泄物」→「アンモニア」→「亜硝酸塩」→「硝酸塩」
最終的には、比較的毒素の弱い硝酸塩が残ります。日に日に硝酸塩の濃度が高くなり、サンゴや魚が生きていけなくなります。そのために週に1度程 水替えをして薄めます。ろ過バクテリアの働きで、水替え頻度を長くすることができるのです。

淡水魚でも水作りは必要ですが、海水魚の場合は海水のコストがかかるので、ベテランは、長期間 水替えをにしないで済むように工夫しています。例えば脱窒素バクテリアで硝酸塩を分解する方法や、リフジウム水槽を作って、その中の海藻に硝酸を吸収させる等の方法があります。リフジウムで増えた海藻は定期的に廃棄します。

新しく水槽を立ち上げる時は、新しい水槽にパイロットフィッシュ(丈夫な海水魚スズメダイ等を1匹)を入れて、1か月程飼育します。パイロットフィッシュからでた排泄物やエサの残りからアンモニアが発生するので、それをエサにろ過バクテリアが増殖します。理想は経験上、2か月以上経ったつと海水が良い状態になります。水替えをする時は、急激な水質変化を抑えるために水槽の1/3程の海水を入れ替えます。

海水魚やサンゴが生きられなくなる理由にあるのは、魚のエサの残りや排泄物で水を汚すことです。その処理がうまくできれば、海水魚やサンゴを長く飼育することができます。下の図は、有害物質を分解させる方法を表にしました。尚、硝化菌が十分に増殖するのは3か月程度必要ですので、最初は丈夫な生体から飼育した方がいいでしょう。

水槽(海水)の水質を維持する方法

エサの残りや排泄物は、有害なアンモニアが発生する前に、プロテインスキマーで排出することができます。一方、アンモニアをバクテリアで分解する場合は、最終的に比較的無害な硝酸塩まで分解されます。硝酸塩は水槽に残りますので、水替えを定期的行って硝酸塩の濃度を下げます。また、脱窒素バクテリアを使って、硝酸塩を分解させることも可能です。底砂を厚く敷いて、無酸素状態を作って脱窒素バクテリアを増やす方法です。こうすれば水替えを長期的に行わないことも可能になります。但し、硫化水素(有毒ガス)が発生するので初心者には向いていません。

自宅では、硝酸塩を削減するために添加剤(みりん)を水槽に入れています。市販の添加物は高価なので、市販のものと成分(糖分、メチルアルコール、酢等)が似ている「本みりん」を利用しています(※ 「みりん風調味料」はアルコール成分がないので使えません)。脱窒素バクテリアの増殖スピードは凄まじく、本みりんを入れすぎると1日で脱消化バクテリアで水槽が白くなることがあります。亜硝酸削減の効果は、直ぐに確認できます。硝酸塩を除去する方法は、別のページのブログ「手軽でお金を掛けない水質管理(リン酸・ケイ酸・硝酸の除去)」で紹介していますので、ご参照ください。

ろ過方式
自宅では、ウエット方式に加えてプロテインスキマーを併用しています。理想は亜硝酸塩を出さないベルリン式ですが、海水魚も飼育しているので、ろ過能力を高める必要があります。また、併用することでプロテインスキマーの故障に備えることができるメリットもあります。ろ材は、高価なセラミックやガラス製でなく、粗目のサンゴ砂を入れてpHを安定させています。

■ ベルリン式(プロテインスキマーのみ利用)

ベルリン式

ベルリン式は、大型のプロテインスキマーによって、アンモニアに分解される前の有機物を取り除きます。ウールボックスは、ゴミを取り除くウールを設置することが一般的です。

プロテインスキマーで、取り除かれなかった有機物は、ライブロックやサンゴ砂に付着しているバクテリアで分解します。ベルリン式は、主にミドリイシなど水質に厳しいサンゴでの飼育に利用されています。

■ ウェット式(濾過槽・フィルター)

ウエット式は、バクテリアの働きで、有機物を分解します。最終的にに比較的毒素が弱い硝酸塩になります。ウエット式では最終的に硝酸塩が残るので、ミドリイシの飼育には向いていませんが、排泄物を多く出す海水魚の飼育では有効です。

ウエット式

・アンモニア:
 0.25ppm魚は長期的に有害、0.5ppm以下にする

・亜硝酸塩:
 0.5ppm魚には長期的には有害、0.8ppm以下にする

・硝酸塩濃度:
 魚は、25ppmまで許容。サンゴ10、ミドリイシ1~2ppm以下にする

※  ppm = mg/l 

バクテリア(善玉)の数が多く活発に活動していると、病原菌(悪玉)が少なくなります。水質が良いと免疫力が高くなります。一方で、pHが下ったり、温度が30℃以上になるとバクテリアの活動が鈍くなりますので、定期的にpHを測ることが必要になります。

長生きのポイント
これまで水質管理では、いかに硝酸塩を除去することが最も大切なことと思っていました。でも硝酸塩を少なくしてもサンゴ(LPS)が育ちませんでした。また、海水魚も水替えの期間を長くすると直ぐに病気になりました。その原因は、リン酸塩の増加だったのです。

リン酸塩は、バクテリアがアンモニアを分解すると、硝酸塩と同じように発生します。リン酸塩は無害ですが、カルシウムと結びつくので、サンゴ(LSP)の骨格の形成を阻みます。そしてpHを下げるので、海水魚にも影響があります。水質が酸性に傾くと魚の粘膜が溶かされて、体内に病原菌が入りやすい状態になります。このため白点病などの病気にかかりやすくなります。リン酸塩が増加したことに気づかないで水槽を崩壊させたことがあります。

リン酸塩の増加を知る方法の一つに、pHを測定することがあります。ろ過バクテリアの分解で硝酸塩とリン酸塩が増加してpHが下がります。硝酸塩の量が少ない場合は、間接的にリン酸塩が増加していることがわかります。pHを管理することで、リン酸塩を除去するタイミングを知ることができます。他には、水槽に赤黒いシアノバクテリアが増えると、リン酸塩の濃度が高い状態です。一般的に硝酸塩は管理される方が多いのですが、リン酸塩の管理する方は少ないように思えます。

サンゴや海水魚を長く生きさせるポイントは、リン酸塩の管理(除去)です
リン酸塩の管理は、硝酸塩の管理よりも重要と言われています。自宅の水槽のリン酸塩を削減すると、サンゴ(LSP)の膨らみが大きくなり、海水魚の白点病がなくなりました。リン酸塩を除去する方法は、別のページのブログ「サンゴ(LPS)の共肉が、しぼむ原因はリン酸塩?」で紹介していますので、ご参照ください。

飼育の手間をかけないポイント
メンテナンス性にいい水槽、濾過槽、道具については、別のページのブログ「海水魚とサンゴの世話を簡単に工夫する!」で紹介していますので、ご参照ください。

 維持費を掛けないポイント
自宅では、何とかお金を掛けずに、タツノオトシゴとサンゴや海水魚を飼育しています。その工夫を紹介をTOPページ「タツノオトシゴとサンゴの飼育」でしていますので、ご参照ください。