ナンノクロロプシスと、キートセロスを比較して
アルテミアの最適な餌を決定!
タツノオトシゴのブリードを目指すためには、生餌が必要です。ナンノクロロプシスやキートセロスなど十分な栄養(EPA)を含んでいる植物性プランクトンを、アルテミア(ブラインシュリンプ)に与えて育てることが必要になります。
0.3mm~1.5cmの大きさアルテミアを飼育することができれば、一気に餌の問題を解決することができます。
アルテミアは、メダカの餌や幼魚の餌として幅広く利用されており、主な生産地はソルトレイクで、広大な面積で養殖されています。餌には酵母・ダイズ粉・トウモロコシ粉などを与えており、育ったアルテミアには、EPA(青魚に多く含まれている油)を含んでいないので、そのままでは(栄養不足なので)タツノオトシゴの餌としては向いていません。
そこで、EPAを多く含んでいる植物性プランクトンのナンノクロロプシスや、キートセロスをアルテミアの餌に与えることで、EPAをアルテミアの体内に含有させることができます。
ナンノクロロプシスで、3週間程育てたアルテミアを、2匹のタツノオトシゴに与えると泳いでアルテミアを追いかけ、次々吸いついて あっと言う間に数十匹が喰い尽くされてしまいました。冷凍よりも生きたアルテミアの方がタツにとってはいいようです。
♦ ナンノクロロプシスとは
大きさが2~5ミクロンで緑色をしている。脂肪酸含量は約30%、脂肪酸中EPAが約35%の割合で含まれる。大量培養が容易なで、ヒラメ等の幼魚の餌になる海洋性ワムシの餌として培養されています。
♦ キートセロス(キートケロス)とは
大きさは、細胞の直径が4~15ミクロンで、色は緑褐色である。日本や海外で魚が大量にとれる。海にはキートセロスがたくさん生育している。こちらもEPAを含油しており、主に二枚貝、ナマコ、ウニ、エビの幼生の餌として用いられます。
ナンノクロロプシスで、アルテミアを飼育することは難しいと言われています。原因はナンノクロロプシスの肥料で用いられる硫酸アンモニウムにより、アンモニアが含まれることがあります。この問題を解決するために海水に酢(食用)をいれることでアンモニアを中和してみます。今回、アルテミアを育てられるのかを試してみたい思います。
一方のキートセロスは、アルテミアの飼育では最も向いていると言われています。ナンノクロロプシスとキートセロスのどちらがアルテミアがよく育つのか、3週間飼育しての成長と数を比較してみることにしました。
■アルテミア飼育環境
1.温 度: 26℃
2.塩分濃度: 3.5%強
3.pH : ※ 8.57と8.76
4.エア : 弱め
5.飼育用水: 約1.1ℓ
6.照明時間: 17時間/日
ナンノクロロプシスのpHは、11.5だったのでミツカン酢を2~4cc/L程度(少しずつpHを確認しながら)を入れて、キートセロスとほぼ同じpH8.76まで下げました。尚、アンモニアを酢で中和したときにできる副産物は無害です。
※ ① は、ハッチャー24を利用して、アルテミアをスポイトで2分する
※ ② は、ハイテック茶こしを利用(今回 手抜きで、スポイトでそのまま投入)
12日培養した キートセロスと、ナンノクロロプシスの中ではアルテミアが泳いでいます。キートセロスの培養は、途中まで良好であったが、今日見ると凝集していた。少し手で揉んで溶かしてみました。アルテミアは凝集しても食べるので特に問題はありません。これから約3週間飼育して、それぞれのアルテミアの成長を観察してみます。
11月3日(土)から飼育を開始。4日(日)時点では、どちらも好調です。更に2週間目からアルテミアの密度が低くなってきました。全部が生き残れば、すごい密度になるので、自然に淘汰されます。11月18日(2週間後)のアルテミアの数は同じくらいでした。
両方とも適当な密度で、アルテミアが生息しています。両方のpHを測定すると、餌を分解してアンモニアが増えているようでpHが両方とも上がっていました。
キートセロス Ph 8.57 → 9.07(2週間後)
ナンノクロロプシス Ph 8.75 → 10.14(2週間後) → 酢2.5cc投入 (中和) Ph 8.20
アルテミスの飼育では、pH 8.3~8.85が飼育に適しています。ナンノクロロプシスの容器のアルテミアは、pHが高すぎて成長しないと思い、再度ミツカン酢を入れえ中和しました。キートセロスの方が大きく育っているのは、高いpHの影響かも知れません。キートセロスは、何も手を加えていませんがナンノクロロプシスはpHの調整が必要です。来週は、容器からアルテミアを取り出して、数量と大きさの比較を行うことにします。
♦ 3週間後の結論
アルテミアはの大きさは、キートセロスの方が明らかに大きく育っていました。一方、生存数ではナンノクロロプシスの方が多い結果でした。更にアルテミア全体の体積(見た目の感じ)で比較するとキートセロスの方が大きく、キートセロスは3週間手を全く加えず放置していたことから、キートセロスは、ナンノクロロプシスよりも、アルテミアを育てる餌として優れています。
■ pHの変化
キートセロス Ph 9.07(2週間後) → 8.89(3週間後)
ナンノクロロプシス Ph 8.20(2週間後) → 8.41(3週間後)
※ ナンノクロロプシスは、pHが高かったので初日、2週間後に酢で中和した値
キートセロスとナンノクロロプシスは、3週間1.1Lの容器のなかでそのままエアレーションだけで、アルテミアを飼育することができました。ナンノクロロプシスは緑色から色あせた透明になっているので、アルテミアがナンノクロロプシスを食べていることがわかります。
ナンノクロロプシスのアルテミアが小さい原因は、pHが高いことで成長できなかったことと思われます。上手くpHを調整できればキートセロスと同じくらいに育てることが可能かも知れません。
大きさと生存数(1ℓ強の海水の中)
・キートセロス 4~6mmの大きさ約80匹
・ナンノクロロプシス 4~6mmの大きさ約5匹と1~2mmがたくさん
(数が数えられません)
♦ 総 論
キートセロスの中にアルテミアを入れると、3週間放置すると5mm前後に育つことが確認できました。また今回は、凝集したキートセロスを利用したので凝集していない環境なら、もっと良い結果になったかもしれません。一方でキートセロスを培養する過程で、10日程で凝集してしまったこと(原因は不明)から、キートセロスの培養はよりナンノクロロプシス難しいかも知れません。
ナンノクロロプシスでは、アルテミアを培養する時に、pH調整で酢をたくさん入れるとpHが下がりすぎナンノクロロプシスが使えなくなくなりますので、少しずつ調整して下さい。pHメーターがない場合は、リトマス紙を利用するといいでしょう。また、ナンノクロロプシスが肥料を使い切って凝集した状態(pHが下がっている)ならキートセロスと同じようにアルテミアでも放置して培養することができます。
いずれにしてもpH測定が必要で煩雑なことから、ナンノクロロプシスでアルテミアを飼育するのは少し煩雑です。
更に一週間、大きな水槽に移してアルテミアを飼育しました。抱卵した個体が増えてきたのでタツノオトシゴに与えました。少しやせ気味のニシキデグリもよく食べていました。凝集したキートセロスは、マガキ貝が掃除してくれます。
次の動画は、ナンノクロロプシスで19日間アルテミアを飼育した映像です。
特に世話(水替え等)はしていません。